人気急上昇中のオーガニック下着!その理由と種類について

オーガニック下着とは、その名の通り「オーガニックな素材を使用して作った下着」です。
なぜ、今、オーガニック下着が注目されているのでしょう。

一般的に、下着をはじめ多くの衣類には化学繊維が使われています。化学繊維は、
・静電気を起こしやすいこと
・石油由来の繊維であり加工の段階で多くの化学物質が使われていること
・保湿作用がなく乾燥しやすいこと
などから、肌荒れの原因となることが知られています。

また、下着の素材ともなっている多くの天然繊維は、栽培時に農薬や化学肥料等が使用され、そのための土壌汚染が大きな環境問題となっています。

「肌に直接触れる下着だからこそ、安全で快適なものを」そのような意識の高まりから、オーガニック下着に注目が集まるようになったのです。

オーガニックとは

今さらで申し訳ありませんが、皆さんは「オーガニックって何?」と聞かれたら、何と応えますか?
何となくは分かっていても、説明できるかと言われたら難しい…オーガニックはそんなワードの一つかも知れません。

オーガニックをそのまま直訳すると「有機の」「有機物」という意味ですね。
有機物とは、化学や生物の授業で習ったかと思いますが、炭素(化学記号でいうCですね)を含む物質のことを指します。生き物が作り出す物質(米ぬかや畜糞など)は、大気中の二酸化炭素に由来する炭素を含んでいる有機物ということです。

そこから、オーガニックとは、生き物が作り出した有機物を原料とした「堆肥」を肥料とする栽培方法のことを指すようになりました。

今では、純粋に有機肥料を用いた栽培方法という意味を超え、また、農法や食品だけに留まらず、オーガニックコスメ、オーガニックな暮らし、オーガニックコットンなど、衣食住の全てに使われる言葉として浸透してきました。

オーガニックとは、人にも地球にも優しいライフスタイルの代名詞となったのです。

日本のオーガニック認証制度

日本では、1999年に改正されたJAS法(日本農林規格等に関する法律)に基づき、有機食品の検査認証制度(有機JAS 制度)が創設され、有機食品の基準が定められました。

有機JAS規格のルールを守って生産された食品のみ「有機」「オーガニック」の表示ができるようになったのです。

現在、有機JASマークの対象は農産物、加工食品、飼料及び畜産物です。つまり、国が指定するオーガニック認証制度は「食品」にとどまっています

有機JASマーク

有機の産物の基準は以下です(*1)。
・堆肥などで土作りを行っている
・水耕栽培やロックウール栽培ではなく、土壌を用いた農業生産を基本とする
・環境への負荷をできる限り低減した生産方法
・種まき、または植え付けの前2年(多年生の場合は3年)以上、禁止された農薬や化学肥料を使用していない
・遺伝子組換え技術を使用しない

オーガニック下着の素材となる繊維やオーガニックコスメなど、口にするもの以外に関しては、各民間団体により、環境を改善されつつあるというのが、今の日本の現状です。

オーガニック下着の種類

それでは、どのような素材(繊維)がオーガニック下着で使われているのでしょうか?
オーガニック繊維で作られた製品についての認証制度は、国際的にはGOTS(Global Organic Textile Standard)という基準が有名です。

GOTSマーク

GOTSを始め、オーガニック製品に関する各種認証制度についての詳細は以下の記事に書いています。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

それでは、オーガニック下着の代表的な種類を見ていきましょう。

オーガニック下着の代表格コットン

シャツやパジャマ、タオルなど肌に直接ふれる衣類や寝具、赤ちゃんのおむつなどにも使用され、原料繊維として私達の最も身近なものと言っても過言ではないのがコットン(綿)ですね。

コットンとは、木綿の種から取れる「種子毛(しゅしもう)」のことです。
言葉で説明すると難しそうですが、つまり、写真の白いふわふわした部分のことです。

コットンの原産地はインドといわれていて、5000年以上も前から綿花栽培がされていました。日本には平安朝初期に中国から輸入されたのが始まりで、原料繊維としての長い歴史があります。

現在ではコットンが衣料用繊維の約4割を占めていて、主要産国は、インド・中国・アメリカなど。国土の狭い日本ではほとんど栽培がされていません。

このように私達に馴染み深いコットンですが、実は、世界の農産物の中で1番農薬が使用されている農作物がコットンです。なんと、世界中で使われている農薬の約40%が綿花栽培に使用されていると言われているほどなんです。

そこで、今注目されているのがオーガニックコットン。

オーガニックコットンとは、2〜3年以上農薬や化学肥料などの化学物質を使っていない土壌で育てられたコットンで、栽培期間中も化学肥料は使用せず、有機肥料やてんとう虫などの益虫を活用して、自然な栽培方法で作られたものです。

また、農法だけでなく、製造工程においても化学薬品の使用を最小限とする、労働環境を守って製造するなど、各認証団体により規定があります。

(通常のコットンとオーガニックコットンの違いについて更に知りたい方は以下の生地を御覧ください。)
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日本でのオーガニックコットンの認証

繊維の原料となるコットンは、国際的には有機農産物の一部と解釈され、GOTSというオーガニック繊維の認証制度もありますが、日本の有機JAS規格はその対象が食品に限定されているため、有機JAS認証を取得することができません。

現在、日本では、一般社団法人オーガニック認証センター(OCC)という民間団体が、栽培段階でのコットンについて独自の有機認証を行っています。

OCC認証マーク

有機綿花認証(OCC)の基準

有機JAS規格の有機農産物の生産方法の基準(*1)に沿って、栽培されるオーガニックコットンの栽培段階での有機認証。

コットンの特徴とデメリット

コットンが持つ代表的なプラスの特徴とマイナスの特徴をご紹介します。

プラス特徴

1. 肌さわりが良い
コットンは、微細な繊維のため、滑らかで肌に優しい素材でザラザラ・チクチクといった肌触りはほとんどありません。中空繊維のため保温性も抜群で、吸水性も高いため静電気がたまりにくいのも特徴です。

2. 通気性が良い
コットンの内側と外側で温度の差ができると、内側の水分を吸い取って、外側へ発散されます。そのため、通気性が良く、全シーズンを通して快適に使うことができます。

3. 吸水性がある
リネンほどではありませんが、綿の大きな特徴として吸水性が優れていることが挙げられます。汗を吸い取り外側に放出してくれるので、吸水性・放湿性に優れた下着を作ることも可能です。

4. 耐熱性がある
ミトン、布巾にも使われるほど耐熱性に優れた素材です。熱に当てても溶けたり軟らかくなったりしにくいのでアイロンがけがしやすいのもポイントです。

5. 染色しやすい
コットンは染料に使われるアルカリに強いという性質を持っているため、さまざまな色に染色することができます。また発色性にも優れていて、思い通りの色を乗せることができるのも魅力です。

マイナス特徴

1. 縮みやすい
中空繊維のため、水分を含みやすいという性質があります。水分を含むと体積が増えるので、水分を含んだコットンを乾燥させることで元の状態よりも小さく縮みやすくなってしまいます。

2. 毛羽立ちやすい
摩擦で羽毛立ちしやすく、その結果、毛玉ができてしまいます。毛羽立ったコットンは、手触りも見た目も悪くなってしまいます。

リネン(亜麻)

リネンは、フラックスという亜麻科の植物から作られる植物繊維で、フランス語ではリンネルと呼ばれています。

通常、リネン=麻と考えがちですが、厳密にはリネン=亜麻です。
麻は、リネンだけではなく、ヘンプやラミー、ジュートなどの他の繊維も含んでいるからです。

しかし、日本の家庭用品品質表示法ではリネンとラミーの2種類のみが「麻」表示を許可されているため、下着に「麻」と表示がされていれば、リネンかラミーが原料として使われているということになります。

リネンの主な生産国は、フランス・ベルギー・ロシアなどで、寒冷地で育つ植物です。
また、その歴史は古く、紀元前8000年頃から使用されている人類最古の天然繊維と言われています。なんと、古代エジプト時代、ミイラを巻くために使われていた布もリネン製なんです。

リネン(linen)は、下着を指す「ランジェリー(lingerie)」の語源でもあり、古くから私達の身近な繊維だったことが想像できますね。

また、リネンは、環境にかかる負荷がとても小さく、全ての繊維の中で最も環境にやさしい繊維の一つと言われています。

その理由の一つは、亜麻は少ない肥料で生育させることができ、土地を疲弊させにくい作物であるからです。それ故に、古代エジプト時代から何世紀にも渡って栽培され続けているんですね。

また、リネンはその全てを利用するこが可能で、捨てるところが全くありません。しかも、リネン繊維は生物分解性のためリサイクルも可能なのです。

いつの時代も愛され続けてきたリネン、これからも大切に使い続けたいですね。

リネンの特徴とデメリット

リネンが持つ代表的なプラスの特徴とマイナスの特徴をご紹介します。

プラス特徴

1. 丈夫で長持ちする
天然繊維の中で最も丈夫といわれています。ヨーロッパではイニシャルを刺繍した白いリネンを嫁入り道具とし持っていくと言われているほど。水に濡れて強度が増すという特徴もあるため、洗濯しても傷みにくいのもポイントです。

2. 吸水性があるのに乾きやすい
リネンの吸水率は、コットンの4倍ともいわれるほど。吸水性だけでなく通気性や発散性にも優れているため、濡れてもすぐに乾く特徴も持っているため、汗をかいても爽やかな着心地が続きます。

3. 肌さわりが良い
さらっとした肌触りと、使い込むほどに更に柔らかさと風合いが出てくるという特徴を持っています。

4. 通気性と保湿性のバランがとれている
リネンの繊維は中が空洞になっており空気が含まれているため、暑いとき余分な水分と熱を逃し、寒いときは熱を保ってくれます。1年を通して使って頂ける繊維です。

5. 汚れにくく、抗菌性がある
リネンの繊維に含まれるペクチンの効果で、汚れにくく、汚れても汚れが落ちやすいと言われています。さらに繊維自体に抗菌性があり、カビや雑菌の繁殖を抑えてくれます。

マイナス特徴

1. 縮みやすい
リネンの密度によって違いはありますが、洗濯等により、5%~10%ほど縮む特性があります。特に30度以上の温度のお湯で洗うと縮みやすいと言われています。

2. シワになりやすい
着用や洗濯によって繊維が偏ったり、生地にハリがあるためシワになりやすいという特徴があります。

天然シルク(絹)

シルクは、蛾の幼虫である蚕の繭から作った繊維です。

日本の気候は蚕のエサとなる桑の栽培に適しているため、シルクの生産が興隆しました。現在は、中国産のシルクが多く流通しています。

蚕は、幼虫から成虫になる時に糸を吐いて繭を作ります。繭は、蚕を外敵や自然から守る殻の役割をはたします。
繭の中は、適度な湿度と温度が保たれ、太陽の紫外線や外敵から蚕を守るようになっています。その繭を利用して生糸を作り、それを編み上げたものがシルクです。

シルクは、歴史的な美女を代表するクレオパトラから卑弥呼に至るまで、古くから最高の衣料素材として世界中の人々を魅了し、愛用されてきました。

優雅な光沢としなやかな肌ざわりで特別な高級感を感じる上に、豊かな吸放湿性・保温性などに基づく着心地の良さ。他の繊維とは別格をなす、シルクのみが持つ特性が何よりの魅力です。

天然シルクの特徴とデメリット

天然シルクが持つ代表的なプラスの特徴とマイナスの特徴をご紹介します。

プラス特徴

1. 美しい光沢と滑らかな肌さわり
真珠のように清らかで美しい光沢は見ているだけで気分をUPさせてくれます。また、シルクは蚕の繭から作られるタンパク質からできた天然繊維です。そのタンパク質は、アラニン・チロシン・グリシンなど人間の肌の成分に近い約20種のアミノ酸から構成されています。第二の肌といわれるまでに、人間の肌ととても相性が良いのです。

2. 吸湿性・放湿性に優れている
汗をかいても肌表面のシルクは吸湿性によりサラッとして、余分な水分はすぐに放湿されます。その吸湿性・放湿性は、綿の約1.5倍といわれていて、そのため着心地のよさは抜群です。また、肌を清潔に保ち細菌の繁殖を抑えるので、アトピーなど皮膚病の予防にも繋がります。

3. 保温性がある
シルクの繊維間には沢山の細やかな気泡があります。その気泡による断熱効果で、冬でも暖かく夏はさわやかで、シーズンを問わず、一年中楽しむことができます。

4. 紫外線を吸収してくれる
繭は、蚕の成長のため、紫外線を吸収し蚕を紫外線から守っていました。そのため、繭から作られたシルクにも紫外線の吸収効果があります。シルクの紫外線カット率は90%前後といわれているほどです。

5. 静電気を起こしにくく、環境にやさしい
吸湿性に富んでいるため静電気を起しにくく、燃えても毒ガスを発生しない環境にもやさしい優れた素材です。

マイナスな特徴

1. 摩擦に弱い
薄くやわらかな素材のため、強くこすったり、何度も同じ部分に負担がかかると、毛玉やよれの原因になります。

2. 洗濯に手間がかかる
洗濯する際は手で押し洗い、乾かすときは陰干しが必要です。直接日光に当てると、紫外線を吸収し黄色く変色してしまいます。

バンブー(竹)

「破竹の勢い」という言葉があるように、竹(バンブー)は、1日に30cm-1mも伸び、成長がとても早いのが特徴です。

そのため、栽培のための肥料をほとんど必要としません。また、バンブーそのものに抗菌性があるので殺虫剤などの農薬も必要なく、毎年種を植えなくても勝手に生え変わる性質を持っています。

さらに、根に水を蓄える性質があるため、水やりも少なくて済みます。このような特徴から、人にも環境にも優しい繊維として注目されています。

バンブーは麻と同様の製法で作られる天然繊維で、竹の表皮をはがして中の繊維質を取り出し繊維にします。

堅くしわになりやすい素材ですが、強度が高く、通気性や吸水性に優れています

2種類のバンブー繊維

バンブー繊維の作り方は大きく次の2つに分かれます。

バンブーリネン

バンブーリネンは、麻と同じ製法で作られる天然繊維です。

竹の茎の表皮を剥がして中の繊維質を取り出し、繊維にします。竹の繊維は非常に短いため、生産化が難しい部分があり、市場に出回る数も少ないのが現状です。

堅くしわになりやすい素材ですが、通気性や吸水性に優れています。また、バンブー本来が持っている効果がそのまま発揮されるため、抗菌効果・消臭効果などの特徴を持っています。

バンブーレーヨン

レーヨンと同じ製法で作られる化学繊維です。

竹を溶かして繊維を取り出し、パルプ化して、化学物質を使用して人工的に作られます。

天然のバンブー由来のため、一見、環境に良いイメージも持たれていますが、一般的なレーヨンと同様に生産過程で有害な化学物質を使うため、環境にやさしいとはいい切れません。

また、製造工程使われる化学薬品によって、バンブー本来が持っている効果が失われてしまいます

バンブー(バンブーリネン)の特徴とデメリット

バンブーが持つ代表的なプラスの特徴とマイナスの特徴をご紹介します。

プラス特徴

1. 抗菌効果がある
バンブーには抗菌効果があります。そのため、日本でも古くから竹の葉で食べ物を包んだり、竹の茎を水筒代わりに使ったりされていました。栽培時も、殺虫剤の必要がなく土壌を汚染することがありません。

2. 消臭効果がある
バンブーには多孔質という目に見えないくらいの小さな穴がたくさん空いています。この小さい穴が臭いの素となる物質を吸収してくれます。竹炭が消臭剤として活用されているのはこのためです。

3. 強度が強く柔軟性がある
バンブーの幹は中が空洞で、幹を構成する繊維が多重に詰まっています。そのため、強度が強く耐久性があり、柔軟性もあります。この耐久性と柔軟性は、繊維にした場合にも発揮されます。

4. 静電気が発生しにくい
バンブーは他の繊維に比べて静電気の発生が極めて低い繊維です。そのため、着心地もよく不快感なく身に着けられます。

マイナスな特徴

1. 製品化が難しい
竹の繊維はとても短いため、生地とするには労力とコストがかかり製品化が難しいというデメリットがあります。

2. 洗濯に注意が必要
バンブーは酸性の植物のため、アルカリ性に弱い性質を持っています。弱アルカリ性の洗剤を選ぶことが必要です。また、漂白剤、蛍光増白剤もバンブー繊維を弱めてしまうため注意が必要です。

その他の素材

ソイ(大豆)繊維

大豆油の絞りカスを使って作られる新型の再生植物タンパク繊維です。

特徴として、カシミヤのような手触りと、シルクのような光沢を持ち、他の天然繊維に負けるとも劣らないくらいの通気性・吸湿性・保温性を有します

また、染色しやすいという特徴もあり、今後の用途が期待されている繊維です。

ミルク繊維(プロミックス)

ミルクカゼインという動物性のタンパク質とアクリルニトリルを結合させて作られた繊維です。

このミルクカゼインは牛乳に含まれるタンパク質のため、この繊維はミルク繊維と呼ばれています。

特徴として、シルクのような風合いと光沢を持ち、吸湿性があり着心地が良いことが挙げられます。

また、ソイ繊維と同様、染色性に富み、今後の用途拡大が期待されている繊維です。

おわりに

一言でオーガニック下着といっても、どのような素材で作られているかはさまざまです。

今後も、下着を作るのに適した多くのオーガニック繊維が登場してくることでしょう。

これまでもこれからも、オーガニック下着に共通することは、その素材をつくる過程、下着をつくる過程全てに、造り手の人と環境への優しい想いが込められているということです。

大切な自分の一番近くにある下着にこそ、こだわってみては如何でしょうか。

引用: 農林水産省HP、NPO法人日本オーガニックコットン協会、一般社団法人オーガニック認証センター